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2008.10.01 論文:港で出合う芸術祭・神戸ビエンナーレの実施とこれから


2008年10月1日

都市政策(勁草書房)

 第133号 (2008年10月1日号)

特集 : 文化創生都市づくりとビエンナーレ

神戸は、その地理的・歴史的条件により古くから“みなと”とともに発展し、“みなと”を通じて海外から文化を取り入れて、異文化交流の最先端として、多様で重層な文化が根付き、共存してきた。また、阪神・淡路大震災により傷ついた心を癒し、復興への勇気を与えてくれた文化の感動は、市民にとって忘れえぬものとなっており、文化は震災復興の活力となって大きな役割を果たしている。

この、神戸のまちの歴史・経験を踏まえ、文化を活かして、これからの神戸をどのように創っていくのかを市民とともに考え、また、市民とともに文化創生に取り組んでいくための基本理念として、平成16年12月に「神戸文化創生都市」の宣言がなされた。現在、この宣言を受けて平成17年9月に策定された推進プログラムに基づき、文化創生都市づくりが行われている。その主要な取り組みの一つとして、神戸に芸術文化の力を結集して内外に発信する機会を設け、神戸の芸術文化の更なる振興を図るとともに、まちの賑わいや活性化につなげる試みとして、またデザイン都市推進の文化面からの展開として、昨年10月~11月にかけて、2年に1度の芸術文化の祭典「神戸ビエンナーレ2007」が開催された。

今号では、神戸における文化創生都市の在り方とともに、神戸メリケンパークを中心にコンテナの中にアート作品を展開するユニークな催しであった第1回の神戸ビエンナーレの検証や、本年7月に基本計画が発表された来年開催予定の「神戸ビエンナーレ2009」の方向性についての論文を掲載し、都市戦略としての自治体文化政策を検討するうえでの一助としたい。

まず、論文「文化創生都市とは何か -自治体戦略としての文化政策の視点から-」では、1980年代からの文化政策の基本思想を振り返るとともに、創造都市論の視点などから21世紀の都市戦略としての自治体文化政策を考察する。次に、「1990年代以降の日本における芸術の拡張機能 -神戸アートビレッジセンターの事例を中心に-」として、企業メセナなどに始まる昨今の日本の芸術文化を取り巻く社会情勢と神戸のアートビレッジセンターの最近の活動事例をもとに、これからの時代に芸術が存在しうる価値基準、“文脈”の拡がりの可能性を探る。されに、「港で出合う芸術祭「神戸ビエンナーレ」の実施とこれから」「これまでの神戸の文化施策と神戸ビエンナーレ2007」では、神戸ビエンナーレについて第1回の総括と今後の方向性、神戸市文化行政における位置づけについて述べる。また、参考資料として編集部が神戸市内で芸術・文化活動を行っている特徴的ないくつかの団体を取材した概要を報告する。