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2001.10.27 朝日新聞:室町十三夜 銀閣の宴
朝日新聞 朝刊 平成13年(2001年)10月27日
室町十三夜 銀閣の宴
「軌道計算、3年かけ再現CG」
室町時代の銀閣を照らす十三夜の月を、コンピューターグラフィックス(CG)で再現した。
京都嵯峨芸大 大森正夫助教授 室町時代の銀閣を照らす十三夜の月を、京都嵯峨芸術大学の大森正夫・助教授(44)がコンピューター・グラフィックス(CG)で再現した。「十五夜よりなじみは薄いけれど、十三夜の観月こそ日本固有のもの」と大森助教授。よみがえった幽玄の世界からは当時の東山文化の一端が伝わってくるようだ。今年の十三夜は29日。
銀閣が棟上げされた1489年の十三夜(西暦10月8日)の月の軌道をコンピューターで計算した。周辺の風景は江戸時代の1780年に描かれた「都名所図会」を参考にした。いまより庭の緑が少ないのが特徴だ。
計算では、午後6時に銀閣の東に位置する月待山から月が上り、境内の錦鏡池にもそれが映る。月を銀閣東側の縁側から見るとほぼ正面に見えるので、大森助教授は「この月をめでるため、銀閣は計算されて作られたのではないか」と推測する。ただ、現在の十三夜では、これより南方にずれて上る。
午後7時過ぎには、月が縁側上のひさしにかかる。そのため、この時間には銀閣2階の花頭窓などから錦鏡池に映る月を眺めたのではないか、とみられる。
日が変わり午前2時半になると、錦鏡池の中州から銀閣を眺めると、銀閣の後方に月が輝き、手前の池にも月が映って見える。
大森助教授は、この三つの変化に合わせて、銀閣1階から見た月待山上空の月、銀閣2階から眺めた池の月、池の中州から見上げた銀閣方向の月、の3種類のCGを作った。完成には約3年間かかった。
十三夜は、陰暦の9月13日夜を指す。この日の観月は、醍醐天皇の時代の919(延喜19)年に、清涼殿で月見のうたげを催したのが始まりとも言われる。
大森助教授は「みなもの月や、淡い光に浮かぶ銀閣や石組みなどの幽玄の世界を楽しんだのでしょう。夜間のライトアップで建物を照らす現代とは違う、わびやさび、謙虚な世界観がそこにはある」と話す。
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