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2009.11.17 TV放送:NHK「スタジオパークからこんにちは」


2009年11月17日(火)

NHK総合テレビ スタジオパークからこんにちは

 

番組名 :スタジオパークからこんにちは
コーナー:暮らしの中のニュース解説
テーマ :地域性を生かした国際美術展

10月6日から11月23日まで開催されている「神戸ビエンナーレ2009」について解説。2年に1度開催される、開催地全体で行う美術展。塚脇淳氏の「KOBEリング」、植松奎二氏の「傾くかたち」「間のかたち」、榎忠氏の「LibertyIsland」などの作品を紹介。「アートインコンテナ国際展」の会場内の様子を紹介。伊庭野大輔氏と藤井亮介氏の「WalkintotheLight」、赤堀マサシ氏の「わっ、平面なんだ」、はしづめまき氏の「むぎゅむぎゅ轍」といった作品が展示されている。

【解説・コメンテーター】中谷日出氏(解説委員)
【コメント】大森正夫氏(ディレクター)

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/200/31522.html

2009年11月17日 (火)
スタジオパーク 「地域性を生かした国際美術展」

(稲塚キャスター)
芸術の秋。国内でも各地で様々な美術展が開かれているようですが、10月6日から11月23日まで神戸ビエンナーレという展覧会が開催されています。
この神戸ビエンナーレとはどんな展覧会なのか?中谷日出解説委員に聞きます。

Q1:神戸ビエンナーレということですが、ビエンナーレとは?

イタリア語で2年に1度という意味で、2年に一度隔年に行われる国際美術展のことをいいます。

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ちなみに3年に1度の国際美術展はトリエンナーレと言います。海外ではイタリアで行われるベネチアビエンナーレが有名です。日本でも横浜トリエンナーレや新潟越後妻有アートトリエンナーレなどが行われています。これらの国際展は地域の特色を生かした作品を展示してアートの力によって地域振興を図っていこうという美術展です。

Q2:神戸の特性を生かした美術展とは?

港や海を含め神戸の街全体を使った美術展になっています。大きく4つの会場に分かれています。

(VTR:会場全景)
神戸といえばやはり港、海ですよね。この神戸ビエンナーレは港に置かれているコンテナを使っての展示や防波堤や海に浮かぶコンクリートの台にアート作品を展示するなど世界でも例のないもの。
まさに港という環境にアート作品が溶け込んでいます。

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主催者はどんな思いなのか?ビエンナーレのディレクターに話をききました。

Q3:どんな作品があるの?

招待作家展 海上展示

・遊覧船の様子
この会場に置かれた作品をどうやって鑑賞するかというとご覧のような遊覧船に乗って神戸港内に設置された作品を展覧します。
作品が展示されている場所へ向かう船の中でも突然ダンスパフォーマンスがあり、、期待感があおられます。

・作品 塚脇 淳 「KOBE リング」
まず、遊覧船に乗って最初に見えてくるのは、こんな作品です。
神戸ビエンナーレの今回のテーマは「わ」です。これは、平和、調和、和(なごみのわ)、環、輪をキーワードとして展示をしている。その輪をイメージして神戸リングと名付けられた鉄の彫刻作品。
メリケンパークという港の方向から見ると真ん丸なリングに見える。見る位置によって形が刻々と変わるまるで港の空間に描かれたひと筆の墨絵のような和でありながら勢いを感じる作品。

・作品 植松  「傾くかたち」
次の作品は、四角いコンテナが赤い小さな円錐形の形に持ち上げられているという作品。
すごく重いコンテナをプラスチックのような円錐によって軽々と持ち上げられている姿は物の存在の危うさを表しているようです。

・作品 榎忠 「バー・ローズ・チュウ」
「バー・ローズ・チュウ」港に浮かぶドルフィンとよばれる大きな船を係留するコンクリートの台の上に置かれた建物。
これは作者の榎忠さんが30年前に神戸の画廊で行った展示を海上に再現したもの。

同じく榎さんの作品。ドルフィンに置かれた滑り台。誰も使うことがない遊具。孤独感とユーモアが入り混じった作品だ。

・作品 植松  「間のかたち」
防波堤のつぎめに置かれた石。これも作品です。
パッと見には違和感がないのですが、作品に近付くにつれその不思議な存在感が醸し出される作品です。
また同じく防波堤の継ぎ目の刺さるように展示されるコンクリートの角柱これも作品です。

そしてこのビエンナーレのメイン展示である「アートインコンテナ国際展」です。

公募部門 コンテナ
国内外からの応募作品から選び抜かれた作家が長さ12メートルのコンテナの内部をつかった作品30点です。12メートルという大きさですがその限られた空間をうまく演出した作品が展示されている。
私が注目した作品を3点ほど見ていただきましょう。

・作品 伊庭野大輔+藤井亮介 「Walk into the Light」
コンテナ内部にち密に計算され張り巡らされた鏡。
作者は生まれては消える海の輝きをイメージしているようですが、この作品で感じるイメージはこれまで感じたことのない不思議なまぶしさが演出されている。

・作品 赤堀 マサシ「わつ、平面なんだ」
コンテナの中に何やら重量感のある物体がゴロゴロと立て懸けてあったり転がっていたりしてますが、近づいてみると実はこれまっ平ら、平面なんです。
コンテナという一方向からしか見ることができない鑑賞者の視点をうまく利用した作品ですね。

・作品 はしづめまき「むぎゅむぎゅ轍」
この作品は鑑賞者がコンテナの中に造られたむぎゅとした洞窟に入ってその触感を全身で味わうというもの。むぎゅとした触感と体が触れたところが光る仕組みで自分が何かに包まれるという不思議な感覚を味わえる作品です。

まだまだ面白い作品がたくさん!全部で30の作品があります。

Q4:課題は?

今、海外旅行では、美術館巡りツアー、音楽ツアーなどの人気は高く、国内でも美術鑑賞の旅が盛んになりつつある。
アート( 芸術) に触れる旅は、アートツーリズムと呼ばれるが、これから成長が大いに期待されるツーリズム(観光)の分野である。
この神戸ビエンナーレは神戸の特色を生かした世界でも例のない国際美術展になっています。
しかし、まだ国内外に広く知られていない。世界の人々や日本全国からもっと人が集まるようにその面白さを知らしめることです。広報などにもっと力を入れることが大切です。

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それから海上で行う展示はもっと海である意味がほしい。海上展示の特色をさらに強く打ち出すことが人を呼ぶためには必要でしょう。
今回は、初めての試みで海上に作品を設置するのはいろいろな規制があって大変だったと思う。しかし、一度前例ができれば今後はもっと幅を広げた企画ができるだろう。
そして、展示の期間が終っても作品が常設されるようになるとアートファンのツーリストがさらに増えるだろう。

港という広大な場所に作品を展示したり、かたやコンテナの内部という制約の中で作品を作ることはアートの新たな可能性を生み出すもの、アーチストの力を培う意味でもこのような展覧会がさらに発展していくことを楽しみにしている。

投稿者:中谷 日出 | 投稿時間:14:06