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テーマ草稿:神戸ビエンナーレ2009のテーマ


2008年07月 神戸ビエンナーレ組織委員会

港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ2011
テーマ:わ wa

私たちは進化した近代科学の恩恵のなかで、進行する環境破壊の脅威にもさらされています。いまや地球上の社会のすべてが、環境とともにある「美」意識を見直す時を迎えているのです。人と自然の関わりを、環境とともにある「文化」の力をいまこそ再考し、再認識しなければなりません。
21世紀の世界に対して提示できる日本の「文化力」とは何でしょう。
私たちは、私たちの文化の根底に受け継がれてきた古くて新しい「わ」の姿勢を、21世紀の地球環境および文化創生のキーコンセプトとして国内外に提示したいと思います。
今、日本が位置する地理的・歴史的・文化的環境と貢献を見据えるなら、これこそが「~港で出合う芸術祭~神戸ビエンナーレ2009」のテーマにふさわしいと考えるからです。
「わ wa」とは、「平和 peace」、「調和 harmony」、「和み comfortably」、「環 surrounding」、「輪 link」などを意味するでしょう。それは多様な意味とその背景を含意し、歴史的あるいは現代的な解釈も派生させる多義性をはらんだ言葉であり、私たちの文化と歴史が独自に生み出し、また日本人と日本文化の形成には欠かすことのできなかった基本概念なのです。「美」意識自体をつくり上げているこの多義性は、言うまでもなく私たちの文化に属するものです。
すぐれて多義的なこの「わ wa」が、現代の環境と歴史の状況に対してどのように響いていくのか、私たちはそれを世界の「環境」に対するひとつの問いとして見届けたいと思います。そして世界へ向けた私たちの新たな文化創生の可能性をそこに託したいと思います。